ウィニコット

家族に精神疾患を抱えた人生

 ウィニコットの母親はうつ病でした。大戦時医学生として従軍しましたが多くの友人が戦死しその後夢が全く見られなくなってしまいました。このために精神分析を受けました。最初の妻は結婚後発病しウィニコットは介護に忙殺されます。2度目の妻はケースワーカーで彼は子供の疎開に尽力しました。

 クライン学派において、もっぱら先天的な生物因子が人格発達に影響を与えるものとして重視され、現実的環境要因の軽視がみられるという批判はクライン寄りの研究者の中でも存在しました。

移行対象

 
 この点についてはウィニコットが貢献している。ウィニコットは乳児のとりまく環境を重視しました。乳児はフラストレーションがたまると空想の中で母親を攻撃して破壊しようとしますが、空想上での攻撃でも母親は破壊されないので、乳児は母親が自分とは独立した存在だと悟ります。「ほどよい母親」でありさえすればこの成長は実現します。ウィニコットはクラインは乳児の内的幻想だけに注目していると考え乳児と環境(母親)との相互関係を重視しました。その上で「移行対象、移行現象」を解明している。「移行現象」とは、乳児が万能感的自己愛的幻想の世界(クラインが解明した早期の内的世界)から現実的客観的な世界の認識へと移行・発達する際に見られる現象である。

 この時、乳児は内的とも外的ともどちらともいえない中間の領域での体験をする。例えばこの時期乳児がぬいぐるみのクマへの愛着行動をもったとしよう。この乳児にとってクマは、幼児の内的世界である万能感的幻想をひきずった完全な「私のもの」なのか、あるいは全く私の内的世界とは区別された「私のものではない」のか、はっきりとした認識が出来ない。この愛着された物体であるクマは乳児にとっての第二の現実=内的世界にも第一の現実=外的世界にも属している、すなわち第三の現実に置かれているのである。さらに、第一の現実と第二の現実の交わるこの第三の現実の起こる『場』を、ウィニコットは「中間領域」と呼んでいる。

 この「中間領域」は「潜在空間」である。そこは母親と幼児(ウィニコットの幼児は抑うつポジションに達するまでの幼児)との間での相互作用が行われ、その空間は母親と幼児が「移行対象」や「客観的な乳房=現実の全体対象としての母親」を創造する『場』である。そしてこの母親と幼児の相互作用の起こる『場』は、ウィニコットによれば治療者と患者・クライエントとの相互作用の起こる『場』とも関連する。

 ウィニコットは「中間領域」の体験の延長として「遊ぶことplaying 」を取り上げる。この現実と内的世界が交わる中間領域は、芸術などの文化の基盤になるとしました。