ボウルビー

進化論を精神分析に導入

 ボウルビーは最初精神分析から出発したが、1950年にWHOからの要請で孤児の精神衛生向上のための研究目的で乳幼児期に母親と軽蔑した子供の行動を直接観察するにつれ、精神分析から離れ、動物行動学の影響なども受け独自の愛着理論を発達させた。

赤ちゃんの泣きは進化の中で定着した行動システム

 ボウルビーは、フロイトの「心的エネルギーの蓄積とその放出」という説明原理では、「赤ん坊が、母親が去ると泣き出し、母親の姿を見ると泣きやむ、ということを何度も繰り返す」などの現象を説明できないと考え、それに対して「行動システムとその制御」という新たな説明原理を求めた。つまり、生物のシステムとは、その生物がおそらく生存するであろうと期待されるような環境に適合できるように設計されている。このようなシステムを発達させる潜在的可能性が遺伝される。9カ月までは子供は愛着行動を終えてもいいような獲得目標を計画することはできない。しかし8カ月までは、幼児によって発達させられた行動システムは「個体・種の利益」という目的性を持っている。環境は絶えず変化するが、行為の結果の情報をフィードバックされることによって行動はコントロールされて行き目的を達することによって終結する。

愛着行動形成へ

 生まれたばかりの乳児にも「吸いつく」「しがみつく」「泣き叫ぶ」「頭部の低位」などの多数の原始的行動システムを備えている。2、3週後には微笑と喃語ができるようになる。これらの各行動システムは、様々な刺激によって活性化し、また別の様々な刺激によって終結する。また、生まれたときから人間に発する音・視覚刺激・触覚刺激などを大ざっぱに伝達することができ、これをもとに特定人物に対する愛着行動のシステムが発達してゆく。

愛着行動形成へ

 出生後8カ月までは子供は愛着行動を終えてもいいような獲得目標を計画して行動するということはできない。しかし、9カ月ごろからは、子供は「何が自分に安全感を感じさせ満足をえさせてくれるのか」という条件を発見し、それ以降愛着行動は設定目標にを持つ計画として組織されるようになる。この設定目標は子供によって、その気によって変化するが、彼らは環境・自己・他者に関する作業モデルに基づいて計画を案出する。作業モデルは自分と愛着人物とのあいだの関係パターンに関する子供の評価に基づいている。2歳の誕生日までには、「他人もまた、他人自身の目標を志向している存在である」という認識が可能になり、子供は様々な作業モデルを形成する。

愛着行動は対人関係のパターンを作る

 ボウルビーは、愛着行動はますます発達して行き、人間の一生を通して継続していくと考える。その達成手段は非常に多様で複雑なものとなっているが、対象人物に対する接近行動のパターンは継続してゆく。

愛着行動の分類

 ボウルビーをもとに生後12カ月の乳児に対して約3分間の母親の不在のあとで再会後に母親に対してどのように行動するかという実験が行われた。多数の実験を行った結果、愛着行動には単なる量的な差だけではなく実質的な相違を見せる「安定した愛着」「懐疑的で不安定な愛着」「反抗的で不安定な愛着」の3種類に分類できることが明らかになった。対象児の大多数を占める安定した愛着は、母親と離別した後も母親との接触を求め、母親が姿を現すればすぐに落ち着きを取り戻し遊びに没頭する。彼らは安全な基地として母親を利用し、探索活動と愛着行動のあいだに互いに支え合うバランスが成立している。これに対して、懐疑的な愛着パターンを示す用地は、母親との接触に接近するかと思うと急に遠ざかってあり、母親に抱き上げられてもくつろがず、おろされそうになると抵抗する、などという葛藤的な行動を示した。他のグループに比べて、通常はほかのものに対してであるが明らかな理由もなく怒りを示す傾向が強い。母親が部屋から、葛藤も見せながらも接触を強く求め、母親が一人で遊ばせようとすると抵抗や怒りを示した。去って行こうとすると母親の後を追って行こうとする。

反抗的で不安定な愛着を持つ

 ボウルビーは、ここで観察されるような安定性の相違は後年のパーソナリティー発達の基盤になると考えた。ボウルビーは、出発点からこのような愛着行動の質の相違が成人の人格障害を説明する基盤になる、という確信を述べている。