摂食障害克服に取り入れたい栄養カウンセリング | カロリーだけにとらわれない

栄養カウンセリングの必要性

 栄養士は心理士とは違った面でクライアントを助けます。
 そもそも医療の仕事をする人間は人の世話をやくのが好きな人間です。人間の原点である食を扱う栄養士は母性的役割を果たします。栄養士の中には,自分や家族が摂食障害だったから,この道を選んだという人もいると思います。
 アメリカでは,肥満や摂食障害の専門の栄養士の資格があります。日本でも摂食障害の相談に栄養士がつくような治療機関もありますが,数は少ないでしょう。(ましてや,回復したスタッフとしての栄養士は見つけにくいかも知れません。)
 
 摂食障害の人達は,栄養学の知識は持っていますが,非常に歪んだ,魔術的思考を伴った知識です。栄養士は,この歪んだ思考にも働きかけます。
 
 ところで,栄養相談というと,みなさんはどんなイメージをもちますか。
 どの栄養素をどれだけ摂取したらよいのか,摂取エネルギーにや塩分に気をつけて,等の指導ではないでしょうか。
 しかし,それは今では随分変わってきました。本当のダイエット・カウンセリングができる人は,カウンセラーそのものです。

 アメリカの病院に留学をしたある栄養士が,デモンストレーションで,肥満の患者さんとのコミュニケーションのとり方を積極的に学生に指導しているのを見たことがあります。
 おそらく,彼の姿勢が栄養士の本来のあり方なのでしょう。

摂食障害治療における栄養カウンセリングとは?

 栄養士は,摂食障害者の食行動のパターンを取り扱います。
 食事パターン,食物の好き嫌い,食物と結びつけられた恥ずかしさや喜び,甘え,恐れ,処罰などの様々な感情,食物の制限,食物アレルギー等です。
 究極的目標は,食物とクライアントの関係を治すことです。
 栄養士は,食物日記をクライアントに付けてもらいます。こうすることで意識が高まるのです。
 そして大切なことは,栄養士はクライアントに自分の内部に耳を傾けることを教えてます。カロリーなど外部の基準ではなく,自分自身を信じて,正しい栄養の知識の元に食事がとれること-本能的な直感的食事が最終目標になります。
 こうした食事はクライアントが文脈の中で「これが食べたい」という明確な動機付けを持っており,食べてはいけない物は何もないのです。
 このように書くと簡単ですが,実際は大変難しいのです。
 そもそも摂食障害の人は飢えと充足のシグナルが壊れていて,なおかつ外的基準や魔術的思考に過剰に合わせてしまう人達だからです。
 そうした彼らに,自分の意思で完全に独立独行で食行動形成させるのは,もはや本当の食育としかいいようがありません。食事を通して一から再教育する。赤ん坊が母乳以外にいろんな物を食べるスキルを身に付けていくのとおなじように,食行動のスキル(買い物や料理・食事・片付けも含め)を育てていくのです。
 しかも,相手は大変手強いです。当然栄養士に辛抱強さが求められます。

摂食障害の体重管理 | 栄養カウンセリングで目標設定

 究極的なゴールとは体重が一貫して維持できることです。もっと理想を言えば,体重の数値について触れなくなることです。
 しかし,これはすぐには出来ません。神経性拒食症のクライアントは「増やさねばいけない」ことは,わかっていても体重増加に激しく抵抗するでしょう。
 過食症や一部の神経性過食症は,減量が必要となると思いますが,最初は減量ではなく,食行動のコントロールができることがゴールになります。つまり,体重の維持管理が最初のゴールです。
 増やすにしても減らすにしても,少しづつです。摂食障害の本人や関わるスタッフに辛抱強さが求められます。
 また,体重増加を恐れるクライアントは体重測定の際,たくさん水分をとってその後に体重計にのるということもあります。こうした行動も摂食障害のずるがしこさの一例です。
 摂食障害は,体重と自己評価が結びついた,もはや洗脳状態です。 
 神経性拒食症の回復の兆しは,月経が再開されることです。この時の体重が治療の良いガイドとなります。
 「体重増加が怖い」という拒食症者には,恐怖症が段々と恐怖感に耐性を付けていくのと,同じように「体重増加」についての耐性を身につけてもらいます。スモール・ステップです。カメの歩みかもしれません。しかし,この精神力を付けていきながら同時に体重増加をしていきます。
 目標となる体重は,標準体重の90%以上,体脂肪率は18~25%です。もちろん人によって体質,体格は,異なりますから一概にこうあるべきとは言えません。一番大切なのは健康であることです。
 ただ,標準体重の90パーセント以上は再発率が低いという研究があります。ですからこのあたりの体重を目安にすればよいと言えます。