精神医学・心理学における主要な学者の人生や理論によって心理学史を学びます。

フランス近代精神医学

  • ピネル
     中世西洋では精神障害は最初は「悪魔憑き」とされ、後には「怠惰」などの罪とされ、処罰の対象でした。啓蒙時代になって「精神病患者を鎖から解き放った」とされるのがピネルです。
  • エスキロール
     フランスの精神病院近代化の時代に活躍しました。この時代には、精神疾患を病気として疾患単位を定め分類する試みが多く行われましたが、エスキロールの分類をピネルの分類よりも高く評価する研究者もいます。

ドイツ記述精神医学

  • クレペリン
     現代精神医学の父と呼ばれるクレペリンの診断分類体系は圧倒的な影響を勝ち取り、今日のDSM分類にも大きな影響を与えています。統合失調症(早発性痴呆)と気分障害(躁鬱病)の2大疾患を確立しました。
  • ヤスパース
     精神障害者をその症状だけで記述してゆくとまるで「病的症状の塊」のように見えてしまいます。ヤスパースは精神疾患を持っている人に対しても、自然に共感できる部分に対しては了解という人間的理解をすることの必要性を説きました。
  • クレッチマー
     体格と性格には関連性があると主張しました。分裂気質・循環気質などの性格類型は今日にも影響を与えています。その背後には、症状だけではなく、色々な角度から病者を見るべきだという主張がありました。
  • シュナイダー
     統合失調症を正確に診断するために、「統合失調症のみに見られてそれ以外の疾患には見られない症状」(一級症状)を提唱しました。人格障害の定義にも影響を与えています。

正統派精神分析

  • フロイト
     生得的な性欲エネルギー(リビドー)は抑圧されて無意識へと潜み、様々な症状となって現れるという精神分析を確立しました。多くの批判を浴びつつ、20世紀文化に多大な影響を与えました。
  • アブラハム
     フロイトの性欲発達論をより細かく整理して性格傾向と結びつけました。有能な実務家で、多くの弟子を育てました。
  • エリクソン
     発達論を子どもに限定せず、生涯にわたるライフサイクル論を提唱しました。青年期の重要な課題として位置づけられたアイデンティティ概念は広い影響を与えました。

精神分析正統派からの離反者

  • アドラー
     人間理解に因果論よりも目的論を重視しました。人間は共同体に所属し、そこに貢献しているという実感が必要であると考えました。
  • ライヒ
     言葉による分析よりも身体の方が嘘をつかないと考え、身体にアプローチする心理療法の先駆となりました。パーソナリティ論にも業績を残しました。後にオルゴン・エネルギーに取り憑かれ薬事法違反で裁かれる等、妄想的な傾向を強めました。

対人関係論派

  • サリヴァン
     性欲のみが人間を決めているのではなく、対人関係に対する欲求こそ重要であるとしました。対人関係を重視する現代の対人関係学派の鼻祖となりました。
  • ホーナイ
     他者に対してどのようなスタンスをとるのかという視点からパーソナリティを分類しました。フロイトからの離反とされ、文化人類学などに接近しました。
  • フロム
     マルクス主義を重視し、社会から家庭教育に伝わる価値観がパーソナリティ形成に大きな影響を与えると考えました。独自なパーソナリティ分類を提唱しました。

対象関係論派

  • クライン
     乳幼児は活発な空想活動を行っていると考え、成人と同じ精神分析が可能であると考えました。性格形成を段階としてではなく、態勢として柔軟に考え、病的な場合には後戻りがありうるとして対象関係論の鼻祖となりました。
  • フェアバーン
     仮説的な本能のエネルギーよりも、養育者のイメージが取り入れられる現象を重視しこれによって心のサブユニットが形成されると考えました。カーンバーグに大きな影響を与えました。
  • ウィニコット
     本能論の影響が強いクラインと異なり、乳幼児の空想活動は母親との相互作用の中で現実的になってゆくとして環境を重視しました。その過程で現実の対象が空想的に扱われる移行段階があるとしました。 

米国統合精神分析派

  • カーンバーグ
     正統的な自我心理学と対象関係論とを統合する理論を打ち出しました。発達過程と様々な精神病理を結びつけましたが、低水準のボーダーライン的態勢としたものは境界性人格障害の理論に大きな影響を与えました。
  • ボウルビー
     進化論的な視点を取り入れ、乳児は生き延びるために特定の養育者との間に愛着という絆を作ると考え、愛着形成のメカニズムは遺伝的に備わった「特定の人が抱くと泣き止む」などのシステマティックな行動にあるとしました。

人間性心理学派

  • フランクル
     アウシュビッツ強制収容所を生き延びた体験から、いかなる環境に対しても人間はどのような態度を取るのかを選択できると主張しました。価値観を重視するロゴテラピーを提唱しました。