自己愛性人格障害 | 失敗を合理化

失敗しても自己評価を修正しない

 ナルシストたちは、彼らの自己評価に合致しない失敗をたくさんやらかしています。だが、それらは彼らに痕跡を残しません(昔、『ダイヤモンドは傷つかない』というタイトルの恋愛小説がありましたが、ナルシストのキャッチフレーズにしてもいい言葉です)。失敗しても、それによって自己評価を修正しないで済むようなからくりを彼らは使っているのです。

 彼らは、頭の中で、自分の失敗を合理化します。「タイミングが悪くて、俺の実力が出し切れなかった」「俺の理念が高邁なので、愚かな平民どもが理解できなかったのだ」「ライバルが裏で足を引っ張っているのだ」・・・いずれも、頭の中でひねくりだした理屈にすぎません。他人や外的要因など、とにかく自分以外の要因に罪が着せられます。彼の元来高すぎる自己評価は、まさしく『ダイヤモンドは傷つかない』―無傷のままに維持されるのです。周囲から見れば、「よくもまぁ、自分に都合のいい方向に話をもっていって・・・」というところです。ナルシストにとって都合の悪い部分は、すべてカット。だが、そんな穴だらけの論理でナルシストたちはいともたやすく自分を納得させてしまいます。

 ナルシストの問題は自分に対する高すぎる自己評価にあります。失敗することで自分がそれまでの自己評価に価しないことが分かっても、自己評価を現実にあわせて修正することをしようとしません。頭の中で理屈をこね回して「失敗したのは自分のせいではない」というロジックを組立てることによって、このピンチ(自己評価を現実的に修正するチャンスなのですが)を脱します。

 特に思春期から青年期は、自己評価のアップダウンが激しい年代です。通常は、ここで成功失敗を繰り返して自分自身に対する評価は次第に現実的なものとなってゆきます。

 失敗しても自分の力不足を認めようとしないナルシストはこのような修正の機会を失い、自己評価は高すぎるままです。いつまで経っても現実的な自分の力量が見えません。非現実的な自己評価がいつまでも変わらない様子は「悪しき安定」と呼ばれることもあります。

過敏で怒りっぽいタイプも存在する

 ただし、ナルシストが全て「全然傷つかないダイヤモンド」というわけではありません。中には、自己評価を下げかねないような対応をされると過敏に激怒するナルシストもいます。周囲からみると、全く相手をけなしたつもりではないのに、突然「バカにしやがって」と怒り出すように見えます。その理由は「着席した時にすぐにコーヒーを持ってこないのは、私がどれだけ仕事で苦労しているのかわかっていないからだ」など、周囲には予測できない理由であったりします。立場が上のナルシストの場合、プライドを少しでも傷つけられると、それには釣り合わないほどの怒りを示すタイプもいます。