自己愛性人格障害 | 高すぎる自己評価・共感性の乏しさ・特別扱いを求める

フロイトの考え方

 フロイトのナルシシズムに関する理論は、様々な変遷を見せていますが(ストーンの整理によれば、現代のフロイト研究者の間では、フロイトのナルシシズム論には、「性的倒錯の一つ」「発達過程上の一段階」「対象選択の一つのタイプ」「自己評価に関連した一つの自我状態」という4つの位置づけが数えられるという見解もあります)、とりあえず『精神分析入門』の段階で書かれたナルシシズム論について概観しておきましょう。
 フロイトは、自らのナルシシズム論は、ネッケによって記述された「自分以外の性的対象に注ぐはずの愛情をすべて自分の体に注ぎこむ」というナルシシズムの定義から来ている、と位置付けています。彼はそれを「対象に向けられるリビドーが、自分自身をもって欲求充足に換える」という現象であるとしています。

ライヒの考え方

 ライヒはこの性格タイプの根本的な特徴をリビドー・エネルギーが過剰に算出され、それによって攻撃的な強い行動をとりうる、というところに見ています。いわばエネルギッシュなことこそナルシストの根本的な特徴であり、それが政治家や起業家、プロスポーツ選手のような成功する方向に行くか、犯罪者のような失敗する方向に行くかは、その人物と社会との相性次第、という見方をしているのです。
 以上のような主張を見ればライヒを「ナルシスト=精力的な野心家」と性格づける一方の極に入る、と位置付けることに問題はないでしょう。

 「リビドーが自分に向けられたもの」「エネルギーをもてあましている野心家」―いずれの方向にもナルシストの肖像は進んでゆきませんでした。ナルシシズム論の中心であった20世紀後半の精神分析は、ナルシストを自己概念という考えに関連させました。つまり、ナルシストは自分を高く評価し過ぎている人たちなのです。

DSM-5の診断基準

 このようにずっと注目を浴びていたナルシシズムはDSMⅢにも細かい定義がなされています。そして、今日のDSM-5には次のように診断基準が書かれています。

「以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される
(1)自分が重要であるという誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、十分な実績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待する)
(2)限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている(3)自分が"特別"であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけが理解しうる、または関係があるべきだ、と信じている
(4)過剰な賛美を求める
(5)特権意識(つまり、特別有利な取り計らい、または自分が期待すれば相手が自動的に従うことを理由もなく期待する)
(6)対人関係で相手を不当になヨウする(すなわち、自分自身の目的を達成するために他人を利用する)
(7)共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気付こうとしない
(8)しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む
(9)尊大で傲慢な行動、または態度」